“てんや”って知っていますか??吉野家とか松屋とかそういう感じの天丼屋さんのチェーン店なのですが、私はこの“てんや”に22歳、遅めのデビューを果たし、「天丼ってこんなに美味しいんだ!しかも安い!うわ〜」っといたく感動し、それから月に1回は必ず食べに行く。行って注文するのは、小天丼&小うどん(温)のセットでそれ以外のメニューは頼んだことがない.
2013年12月17日、1時間半の残業で自宅最寄り駅に着いたのは21時。中途半端な残業。雨が降っていて、とても寒い。すごく腹が減っている。こんな時は私が私に言うのだ「よし、こんな日は“てんや”に行こう」と。 通い慣れたてんや某支店。 いつもいるベテラン女性店員が甲高い声で「いらっしゃいませぇ〜」と迎えてくれる。「こちらのテーブルへどうぞ」と突き出された手の指は上品に揃えられており、一番奧の席をさしている。私が座ると満席であった。バタバタとしており忙しいようだった。 メニューは見ない。決まっているから。 そのベテラン女性の他に、いつも見かける金髪の男性店員と、初めて見る新人女の子2人が目に入った。天ぷらを揚げているのはいつもの太っちょさんと小豚さんの2人コンビだった。 ベテラン女性店員が混雑した店内で、私達“客”には高くてよく通って感じの良い声を出し、新人女の子2人には「そっちじゃない」「ちょっと待って」「これ○番に持ってって」「それ終わったら、○番テーブル拭く!」と大きく強くキツい声で指導していた。そのベテラン女性店員の声の切り替え感じが方がなんか嫌だった。仕事なのでしょうがないのはわかるが、“大人の象徴”のようで、なんでか居心地が悪い。ベテラン女性の存在は新人ちゃんの“純朴さ”や“若さ”やティーンネイジャーの持つ永遠の輝きを脅かすような存在に思えてしかたなかった。 新人2人組はまだ幼く、少女であった。高校生くらいだろうか、2人共おかっぱ頭で、まゆげが太くて、中肉中背で同じような背格好をしていた。そのうち1人は眼鏡だった。とても似た2人の新人ちゃんをみていると、きっと大親友で、一緒にアルバイトをして卒業旅行にでもいくつもりなんだろう。きっとそうに違いない!と勝手に想像する。彼女達はベテラン女性店員にキツく言われるがままに、お茶を運んだり、テーブルを拭いたり、天丼を運んだり、食器をさげたりと嫌な顔ひとつもせずに、というより、楽しそうに、とても一生懸命に働いていた。しかし、まだお客さんから注文を受けることはまださせてもらえないようだった。 混雑した店の中で、なかなか注文ができないでいる私はただ呆然と観察する。ベテラン女性店員も新人指導と満席の忙しさで私のことなど気付いていないようだったので、新人の眼鏡ちゃんが隣の席を片付けに来た際に、「すいません。注文いいですか?」と声をかけると笑顔で嬉しそうに早足でこちらに駆けつけ、「はい、ご注文どうぞ!!」と目をキラキラと輝かせながら楽しそうに言った。私はいつものように「小天丼と小うどんの温かいやつセットでください」っと言うと、新人ちゃんは「注文まだ慣れてないんです」と照れて嬉しそうに言いながら、慣れないハンディで 「こてん丼 ....っと、こここ、小うど ....ん、温かい方...ですね、、、えーと、小てん...丼、と、小う...う...うど...、あ、あった!小うどんですよね...。ご注文繰り返させてもらいます、小天丼と温かい小うどんでよろしいですか?」 私「はい」 新人ちゃん「もう一度ご注文繰り返します。小天丼と温かい小うどんでよろしいですか?」 私「はい」 新人ちゃん「念のためもう一度ご注文繰り返させてもらいます。小天丼と温かい小うどんですね?」 私「はい。それです。」 新人ちゃん「ご注文承りました」 そう満面の笑みで言った後、ハンディをポチりと押す。 店内に注文が入った時の電子音が鳴る。 そして、彼女は他の店員に注文が入ったことを知らせるために歌うように踊るように発した。 「小天丼、小うどん、かけです!」 と。 それをベテラン女性店員が甲高いよく通る声で復唱した。 他の店員は「うぃ〜」と返事をしながら新人眼鏡ちゃんに目で合図をしているようだった。新人眼鏡ちゃんの注文確認に金髪も、厨房の太っちょも、小豚も祝い喜んでいるかの表情だった。そして大親友のもう1人の新人ちゃんは、そりゃあもう嬉しそうに、だけど、負けてはられるものですかというような表情を作って、眼鏡ちゃんに目で訴えていた。眼鏡ちゃんは本当にうれしそうだった。ベテラン女性店員はみんなのそのようなやりとりに気付いていないようだった。 そんなやりとりを見ながら私はひどく心が揺さぶられていた。 彼女の言った「小天丼、小うどん、かけです!」の響き。 私は聞いた。感じたのだ。 まるで魔法のような、詩のような、魂のような言葉だった。 なんという純粋さだろうと、その美しい音色に涙が出そうになるのを必死にこらえる。 てんやに来る度に何度も何度も聞いてきた、この義務的な、無感情な、なんでもない言葉がこんな意味を持ち、美しい響きを持つことができるなどと考えたこともなかった。 新人ちゃん2人は終始輝いていた。それは永遠みたい。 彼女達は、今、働く事に楽しみを見いだしている。 働いてお金を稼げる自由を喜んでいる。 なんたる輝きだろう。 少女達よ永遠なれ。
by namazucco
| 2013-12-19 00:33
| life
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鯰 エリコ
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